メビウスの惑星

雑食性消費者の宇宙遭難日記です。プログレ入門者

【音楽レビュー】Soft Machine - Third(1970)

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有名すぎますね。その名の通り3枚目となるソフト・マシーンのアルバム。ジャケ写がかっこいい。個人的「LPレコードで飾って置きたいジャケ写」ランキングは堂々の1位。LP再生機器持ってないけど。

バンド自体はカンタベリー・ロック、プログレッシブ・ロックサイケデリック・ロック、ジャズ・ロック、フュージョンとして語られることが多い。

本作はジャズ色が濃く、プログレとサイケの要素が混ざっているような感じか。 

Wiki調べたり名盤500選などを見るのは好きだし、愛読書でもあるジョジョの奇妙な冒険にも元ネタとして登場するもんで、バンド名もアルバム名も知っていたけれど、なんとなく取っつきづらくてよく聴いてこなかったのだ。

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ジョジョソフト・マシーンは対象を薄っぺらにできる能力(絶賛アニメ放送中!)

結局ソフト・マシーンとの出会いは昨年最後の来日をするっていうニュースを聞いたところから。レジェンドが生きているうちに見られる機会なんてそうそうないので、ここぞとばかりにライブチケットを申し込んでしまった。聴いたこともないのに。

申し込んでしまった以上は会場でぼんやりするのも勿体ない。その場で聴いて咀嚼するのも得意ではない、だからしっかり予習していこうということにした。

「困った時のSpotifyで大体聴けるのでそれを聴いていこう。そうして色々通しで聴いた結果もっとも印象に残っている一枚がこれなのであった。

Track List/////////////////////////////////////////////////

#1 Facelift -Live-  (18:45)

#2 Slightly All The Time  (18:10)

#3 Moon In June  (19:06)

#4 Out-Bloody-Rageous  (19:11)

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Personnel/////////////////////////////////////////////////

Mike Ratledge - Organ, Piano, Electrc Piano

Hugh Hopper - Bass

Robert Wyatt - Drums

Elton Dean - Alto Sax, Saxello

Rab Spall - Violin

Lyn Dobson - Flute, Soprano Sax

Nick Evans - Trombone

Jimmy Hastings - Flute, Bass Clarinet

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4曲しか入っていないにも関わらず、70分オーバーの大アルバムだ。レコード2枚の面裏、A,B,C,D面の曲担当をそれぞれ当時のメンバー4人に振り分けた構成になっているためだ。だから各楽曲は20分に迫る大作となっている。即興演奏で大曲にしようってことなのか。それにしても思い切った感じがする。


Soft Machine - Third 1970[Full Album]

曲紹介

#1 Facelift -Live-

Bassの"Hugh Hopper"の作。私の中にあるジャズのステレオタイプからは想像も出来ないノイジーさと不安定なテーマ、そしてライブならではとも言えるローファイ感。もっともライブ版とはいっても、大きく分けて2つの演奏をつないでいる。前半部分はグモグモとした形状し難い楽器同士の掛け合いから始まる。5分程度から印象的なメインテーマに突入。堅牢な西洋(もしくは中東)式城郭を前に行進する軍隊様なイメージを覚える。7分時点からサックスが唐突に唸り挙げ、ファズ・オルガンが次のテーマへと突入。サックス、オルガン、ベースが掛け合い熱いインプロパートが演じられる。10分時点でオルガン・サックスが再度テーマを奏でると1分ほどのクロスフェード部に突入し後半部分へ。後半部はフルートなどによるしばらくの静寂の後、偏執的ベースリフに支えられたパートが続く。サックスのソロがフェードアウトしリズム隊とピアノだけになって数回テーマを繰り返すと突如イントロのテーマに回帰!!曲は終盤に差し掛かる。巻き戻しを利用したカオティックなパートからそのままフェードアウトして終了。
転調が激しく、即興演奏的なパートもありジャズ部分がある一方で、クロスフェードを挟んで曲中のテーマが回帰していく構成などは確かにプログレ然としている様にも思える。ベースとオルガンの音色が曲の暗くてうねるような雰囲気を醸成している様に思える。そしてライブ的なローファイ感からもくる独特な音は他であまり経験したことのない類いだった。名曲だと思う。 

#2 Slightly All The Time

鍵盤の"Mike Ratledge"作。はじめはベースリフとドラムスのリズムが支えながら、管楽器がソロを奏でていくパート。ソロと同等かそれ以上に暴れまわるドラムスが間違いなくロックを聴いているという確信をもたらしてくれる。中間でサックスのメロディから唐突に転調する。テンポ・アップ。ドラムスの細かく刻まれるハイハットとベース、オルガンの短くも印象的なリフのパートへ。さらに9/8拍子のパートへ移行。ドラムスとエレピに支えられ、サックス、そしてオルガンが熱情のソロを演じる。そしてサックスとベースにより後半部分のテーマが編み出されていく。Faceliftにも通底する雰囲気を感じるテーマで曲終盤に再度登場する。うねるオルガンとベースに支えられ、再度サクセロがソロを演じる。エレピが登場する勢いで演奏が加速し、ベースとサクセロ、そしてオルガンが疾走する。そして曲終盤、後半部のテーマが再度登場し、爆ぜるように演奏がブレイクする。

#3 Moon In June

Drumsの"Robert Wyatt"の作。C面まできてようやくボーカルが登場する。#1#2が聳える山脈のような曲だったのとは対照的に、Robert Wyattのボーカルは美しく、優しい安堵感に満ち溢れる。ホーンセクションが登場しないからということも理由なのかもしれない。オルガン、ベースそしてWyattのボーカルが、いくつものVerseが折り重ねて行く。歌詞ははじめに登場する”On a dilemma between what I need and what I just want”がテーマになっている。Verse1,2,3あたりからは男女関係の歌詞のように取れる。YouとSheが別々に登場するので、これは三角関係の話なのではないだろうか。実際”I’ve got my bied. You’ve got your man"という歌詞から、お互いに相手がいるにも関わらず惹かれあっているのだろう(Birdは女の子の意味があるらしい)。Verse1,2を経て1分30秒からのベースソロは優しさが迸るようだ。歌詞を確認した"Genius"によると、このベースソロはWyattが演奏してるらしい。本当かな。Verse4から主人公はニューヨークに住んでいるが、故郷たる”Home"に帰りたい気持ちが描写される。TreeやRainを恋しく思う気持ちから、”Home”=英国を懐かしく思う気持ちだろうか。実際West Dulwichというロンドンの地名をあげている。Homeが心安らぐ場所というのを意味するものであるとすれば、これは"She"と"You"の対比の構図を踏襲していると見ることができるかもしれない。Verse5では唐突に曲、そして音楽のあり方?に対するメタ発言がなされる。"Background Noise”や”Leisure time, isn’t it?"など何やら自虐的な発言にも取れるが、Wyattらしさ以外には真意はよくわからない。深い意味はないってことなんだろう。続くVerse6,7はオルガンの伴奏が美しい。The Beatlesの影響を感じる英国らしいオルガンだ。愛と憎悪は表裏一体なのだが、虚しくも時は過ぎ、”She"の距離も離れて行く。曲は一つの感情的到達点に達している。最終的に”You"を取るのだが、”Until I get more homesick”という歌詞は再びこのような事態が発生することを予測していることを示しているように感じられた。だからこそ、”Before this feeling dies, remember how distance tells us lies "なのではないのだろうか。
とにかく曲はここからもう半分、演奏パートである。短いギターオルガンの演奏パートを挟み、ブルージーな展開に突入したと思いきやすぐにテンポアップ、Ratledgeによるオルガンソロに突入する。Wyattによるスキャットも加わり演奏はヴォルテージを増す。13分あたりの妖しいスキャットThe Beatlesの”Long, Long, Long"のエンディングを思い出す。混沌としたところからブルージーな雰囲気のパートに再び入って行く。オルガンが優しい音色で支えているが、徐々に怪しい音に変化して行き、再び混沌の即興パートに。形のあるメロディが登場しないまま、曲は終了する。
歌詞についてはありがちな思考ではあるが、アルバム”Forth”で”Soft Machine”を脱退し、自身のバンド”Matching Mole”を立ち上げて行くことになるWyattの内面を写しているという見方もできるかもしれない。実際はその辺り詳しくないので、ほんの推測に過ぎない。とにかく#1#2とは好対照をなす、優しくも哀しい名曲。後半はジャズ的な成分も多くなるが、サイケ的な成分、アバンギャルドさなどはWyattのセンスなんだろうか。

#4 Out-Bloody-Rageous

"Mike Ratledge"作。エレピによる混沌とした音宇宙が少しずつ姿を表しながら始まる。5分ごろまで浮遊間に酔いしれていると、突如ピアノとベースによるリフが登場する。そして管弦楽器がメロディを奏でる。そしてオルガンによるアグレッシブなソロ演奏が続いて行く。15/16拍子によるアクセントの効いたリフが繰り返される。サックスが交代するように登場しベースリフだけになると、管弦楽器らによるソロとなる…と思いきや転調。オルガンによる宇宙が再度垣間見えたのち、ピアノによるテーマから曲は再開。宇宙オルガンとピアノに支えられた上でサックスが渋いソロを演じる。ヴォルテージが上がるというよりは気高い荘厳さに包まれて行く。全ての楽器が揃って新たなリフを奏でると、ベースの音でブレイク。そして復活するエレピ。幾つもの短いリフが重なり合い混沌となり、そしてゆっくりフェードアウトして行く。 

終わりに

とにかく大曲の構成と、即興演奏的な緊張感(特に1,2曲目)があって敷居が高い印象が強い。しかし敷居の高さとクオリティが直結している感じがする。頑張って聴くとその分感動するみたいな。しっかり集中して聴くのが大切だと思います。
 
ちなみにライブに申し込んだ当時は知らなかったのだが、ソフト・マシーン の編成はかなり激しく変化しており、2018年夏、すなわち来日ライブ時は特にフュージョン期、"Bundles"や"Softs"という時期に近い編成だった。でも準備で聴いているうちに"Third"はすごいかっこよいけれど、"Bundles"や"Softs"はあんまり趣味じゃないなって気付いてしまった笑
ライブ会場が六本木のBillboardだったから、おぎやはぎの矢作らしき人が六本木ヒルズでデートしてるのを見かけたりしながら行ったのを覚えてます。
ライブ会場は個人の席があるタイプでこれもまた慣れなかでビールを飲んだし、周り年上の大人だらけだったし、メンバーみんなおじいちゃんでそこまで演奏キレキレでもなかったり、ロイ・バビントンのベースが腹に乗っかっていたり、即興演奏の真骨頂の部分で興奮してみたり、そうしたらライブが1時間ちょっとで終わってしまっていたり。まあ、うん、いい経験になったかな笑
次にレジェンドが来日するって聴いても速攻で申し込むことはないと宣言して終わります。
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【音楽レビュー】Arabs In Aspic - Syndenes Magi(2017)

(公式サイト:http://www.arabsinaspic.org/ )
バンド名からしてもうクリムゾンのフォロワー間違いなしって感じ。案の定サウンドは中期クリムゾンを中心とした70年代系サウンドで構築されている。プログレッシブ・メタルに分類されることもあるが、これは中期クリムゾン的なメタル要素であり、あくまで時代回帰的な姿勢だ。ヘヴィ・プログレッシブ・ロックというのが最適かもしれない。
公式サイトによればこのアルバムはLPしか刷ってない模様。なんという懐古厨感…時代に逆行している(しかしSpotifyにはしっかりとある)。
普通にCD刷ってます。ウェブサイト見たときにショッピングリストになかったので早合点致しました。(追記2020/6/18)
ところがどっこい私の趣味は70年代サウンドなのだ!懐古厨なんのその、むしろウェルカム!バンザーイ\(^o^)/
キング・クリムゾンプログレが好きな人やキーボードの音が好みだという人は美味しく頂けそう。
  
Track List////////////////////////////////////
#1 Syndenes Magi
#2 Mørket2
#3 Mørket3
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曲紹介

#1 Syndenes Magi
スウェーデン語で「罪の魔法」というタイトル。"Sin of Magic"ってことですね。カッコエエ。そしてテーマがもう暗い、最高❗出だしからメロトロン。そしてロバート・フリップの影響下らしきギターが。そしてパーカッション登場。これ「太陽戦慄☀️🌙」意識でしょ!と期待高まる。メロトロンがにじり寄ってきて、眼前一杯に拡がって緊張感を煽りに煽ると、ギターワーク全てを切り裂きブレイク!圧倒的な衝撃はまさに「太陽戦慄☀️🌙」。良いオマージュといえそう。そして"Easy Money"的コーラスワークが不穏な雰囲気を演出する。あくまでミドルテンポで進んでいくが、その破壊力は維持されたままだ。速度に頼らず暴力的なアンサンブルをしっかりと構築している。時々入るギターソロはロバート・フリップだけでなくデヴィッド・ギルモアの影響も見られる。ノルウェー語の巻き舌感あるヴォーカルワークが独特のドロっとした感じを醸している。歌詞がわからないのが残念だ。支える様なキーボードワークは感情を昂らせる。
ヴォーカルパートが終了すれば、キーボードの唸り上げとともに長い演奏パートに突入する。あくまで先の見えない闇の中を重く暗くゆっくりと歩んでゆく。ファズギターが登場し、場が一層張り詰めていく。少しずつ演奏がアップテンポになっていき、ギターとキーボードがキメのフレーズを奏でて絶頂に到達。低音とパーカッションが地を這うように短い旋律を繰り返す。ギターも付随する。メロトロンが膨らんでいき、はっと息をのんだかと思うと、一瞬の静寂。アコギとともにヴォーカルパートが再度登場し、ひっそりと歌い上げフィナーレ。名曲。
 
#2 Mørket 2
Mørketは「」を意味するノルウェー語。1はどこ行ったかというと2ndアルバム”Strange Mind Of Frame”に収録されている。そういう「太陽と戦慄」みたいなパート分け好きなんだな。
静謐で美しいキーボードはどこか不穏さを残す。静かに旋律を奏でるが、最後の1音が引き延ばされ、激情をほとばしらせる。ギターが登場し、キーボードと共にヘヴィなリフを刻む。やはりミドルテンポ、しかしその緊張感は只者ではない。ヴォーカルパートはキーボードをバックにした静のパートから、続く動・破壊のパートへと対比的に進行する。ヘヴィさが一層よく伝わる。あくまで低音のヘヴィさを確保しつつも、ギター、キーボードは唸りあがる。コーラスワークもあわさり、得体の知れぬ暗黒の輪郭を写し出している。ノルウェーの暗い森を歩いているようなイメージが浮かぶ。景色が変化していく様に演奏が展開していく。地の底に還り行くようなメインテーマの低音が心地よい。そのままアウトロに向けて、曲はカオティックに崩壊していく。音はドロドロの液体のようになり、得体の知れぬ生物の鼓動のようなベースがおぞましく余韻を残す。名曲。
 
#3 Mørket 3
闇 part3。今度は静謐なギターのアルペジオからリスタート。この時点で雰囲気がもう最高に良い。静かにフルート?がフィルインし、哀愁を帯びる。"Epitaph"や"宮殿”的な雰囲気を醸す。先ほどとはうってかわって酔人の様なヴォーカルが呟くように心情を吐露する。美しいコーラスがバックに現れる。「美しい」とは「鬱苦しい」なのだと言わんばかりの雰囲気…。先曲のように戻ったヴォーカルワークの裏では、ピンク・フロイドの”The Great Gig In The Sky"を彷彿とさせるコーラスが感情的を訴えかけてくる。そしてギターのヘヴィなリフパートとキーボードを添えたヴォーカルパートが交互に繰り出される。なんて歌詞なのか本当に気になるな。"Every Mankind~"って歌ってるように聞こえるけど多分ノルウェー語だから違うんだろうな。さて、曲は転調してヘヴィなギターとキーボードによる繋ぎから次のヘヴィなリフが登場❗️したと思うとペースが加速しキーボードが主体となるパートへ。この辺はユーライア・ヒープの影響とかなんでしょうか?我々の心に訴えるように先ほどのリフが繰り返される。またリフに回帰したのち、6分ほど尺を残しブレイク。グモグモとしたメロディのないパートに突入。途中で民族的なビートが現れるも展開を見せることなく消えてゆく…。この辺はアンビエントやらノイズミュージックの影響があるような気もします。明るめのオルガンの音から、最後には一筋の光のようなアコギが現れ、美しいメロディを奏でる。ヴォーカルも登場。何を言っているのか気になるが、おそらくポジティブな内容なんだろうか。長かった20分の曲も何やら幸せそうな展開で終了。名曲。

終わりに

中期クリムゾンを中心とした70年代の暗いハードロック、プログレからの影響が濃い。具体的には音楽性というか作風がかなりクリムゾン的暗黒系だが、音作りに関してはフロイド的な影響がかなり大きいと思う。特徴的なのは複雑な演奏や速さを超絶技巧、変拍子などを進んで採用していないにも関わらず、プログレッシブかつ暗黒的な演出に成功している点だ。例えばフロイドの「狂気」はプログレの典型とされる大曲志向や超絶技巧からみれば例外的である。にも関わらず、プログレを代表する超名盤でもある。そこには技巧に特化せず音数を減らすことにより心理的な効果を高めた音作りがあり、結果的に万人に受け入れられる不易流行の頂に到達したのだ。本作を創り上げたArabs In Aspicはそこから聴く人の心に訴える音使い、万人に届きうる不思議なポップさなどを学び、これを暗黒的な音作りと融合させたのだ。そこに折り合いをつけたのはまさに彼らの手腕であり、お互いが相反することなく結合し新たな価値が生み出されている。要は彼らの作るリフがもっと聴きてえな?」ということです。今後も名盤を作りそうな予感がするので何卒この路線でよろしくお願いします…(懇願) 

 

ちなみにどうでもいいですが、私が2018年に番聴いた曲がこれだったみたいです。Spotifyはこんなのも作ってくれてすげ〜な〜。

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【音楽レビュー】Nova Collective - Further Side(2017)

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あのメタル・ブレード・レコードから発売されている、イギリスのテクニカル・プログレッシブ・メタルの2017年1stアルバム。
メンバーは既に他バンドで実績を積んできた圧倒的技量の猛者たちであり言うなればスーパーグループ(死語)である。
Between The Buried And Meのダン・ブリッグス、Hakenのリチャード・ヘンシャル、元Hakenのピート・ジョーンズ、そしてCynic等で活躍するマット・リンチとどう考えても激ヤバなグループ。
テクニカル・プログレは特に個人的な嗜好の差が激しいジャンルな気がするが、個人的には印象に残ったので紹介。
Personnel/////////////////////////////////////
Dan Briggs - Bass
Richard Henshall - Guitar, Keyboards
Pete Jones - Keyboards
Matt Lynch - Drums
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Track List/////////////////////////////////////////////////////////////
#1 Dancing Machine (機械道化の狂気)
#2 Cascades (懸崖)
#3 Air (虚空を彷徨う真実)
#4 State of Flux (変動)
#5 Ripped Apart and Reassembled (秩序の創造)
#6 The Further Side (混沌、そして手繰り寄せた未来)
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ああ、そういうことなら…

曲紹介 

#1 Dancing Machine(機械道化の狂気)
刹那、ギターとキーボードが映し出す迷宮に迷い込んだ自分自身の姿を了見するだろう。しかしすぐにこれは迷宮などではなく、神々が創りし”機械道化"であることを悟了するのである。我々が感傷を挟む余地も無く精密に構築された緊張感は、容易に理解されることを拒否しているかのようだ。峻烈さと知性が入り混じり、道化は自己再生産を続ける…。慟哭するギターは美しくも儚い…もはや契約者たる主人の命じる舞踏以外を演じること能わぬデウス・エクス・マキナの悲痛な咆哮にも聴こえる。幾度も繰り返えされるこの哀愁のフレーズは、心の痛み、悲しさを辛うじて喪失することなく、自らの立脚点をその地に刻印する。
テクを見せびらかすというよりも周到に計算し尽くされた曲構成、楽器の絡み合い、展開、そして音世界が説得力を持って伝わってくる。キャリアで培われた圧倒的技量、比較的わかりやすい曲展開、ジャケ写にも通づる世界観、長すぎない尺など彼らの特徴が詰まりながらも取っ付きやすさを持った代表曲と言えるだろう。
#2 Cascades (懸崖)
岸壁を今にも打ち砕かんとする潮騒の様なギターだ。
拡がる水平線を前にして、その心は内的虚空《インナー・スペース》に向けられている。迷走、錯綜する様に暗く重い音像を提示する。
内に響くは潮の音、果たして自らを満たす中身とは一体何処にあるのであろうか。
 
#3 Air (虚空を彷徨う真実)
 ミニマル・モデュールと化したギターフレーズは時空の変遷だ、自らの所在を求め彷徨う旅の様だ。辿り着く先は黄金の国《ジパング》であった。自らのうちに拡がる内的虚空《インナー・スペース》、それは物理空間の広がりではなく、もっと深淵の問題。ZEN《禅》との邂逅を果たした彼はその魂のうちに禅問答を繰り返す。有象無象の果てに何を見つけるのであろうか。
アウトロに繰り返される跳ねる様なギターは"リュウイチ・サカモト"の"Thousand Knives”を彷彿とさせた。
#4 State of Flux (変動)
 禅問答に打ち込むうちに、自らと内部が融解し混交し、身体も精神もその境界を超え自由になる。魂が解放され、混みいった街の中の複雑に張り巡らされたレールの上を爆速で疾走する。ギターはその速度で地上を飛び出し山々の稜線をなぞりゆく。更に加速し、第二宇宙速度に達した時、重力の支配から脱出する。あたかも蒼天に敷き詰められた星々をなぞり星座に見立てた我らの血族と同じ行為をギターで繰り返しているかの様である。細長き鋼鉄は流動体《フラックス》となり風となりとどまることを知らない。宇宙を駆け巡るうちに流動体と化した身体は真理をその身の内に吸収する。
#5 Ripped Apart and Reassembled (秩序の創造)
 秩序の創造には、常に痛みが伴う。産みの苦しみ、慣習との離別、そして創造者との決別。真理をその内に宿し、天に登り詰める。天の審判を聴く。破壊と秩序、双方の様相を呈しつつも、着実に積み上げられていく新秩序、進展する崩壊。しかしこれは終焉の序曲に過ぎないのだ。
#6 The Further Side (混沌、そして手繰り寄せた未来)
 天を衝く様な彼の決意。それはカタストロフィを招いてしまう。あらゆる価値が崩壊し、炎上し、塵芥になっていく。しかし何も喪失することの出来ぬものは、畢竟何も創造することも出来ない。喪いしものへの回顧を必死に堪え、新秩序《フューチャー・デイズ》に突き進んでいく。既存の秩序からの最後の抵抗は苛烈を極める。彼らの恒常記憶《ソリッド・ステート・ドライブ》に保存された無数の音楽的展開が無数の光の筋となり世界を包んでいく。世界の大半は瓦礫の下に埋れてしまったが、辛うじて一片の未来を掌握した。ここから新時代が始まっていく、そのファンファーレなのだ。
 
恐るべき技量の高さで、巻き戻せと言えばそのまま逆再生で演奏が出来てしまいそうなくらいである。洗練された技術がアンサンブルの強度を支えているが、逆に言えば皆バラバラでも十分強度がある分、バンドとしての連帯感はあまり強く感じない。あまりにも容易にくっついたり離れたり出来てしまうので、切実な演奏といった趣はやはり少なく感じる。そして展開が多すぎる。耳に残りやすいフレーズはほぼなく、視聴後感はかなりポカーンとしたものであった(逆に言えば「演奏」の最中にこそ生きている音楽とも言えるが)。このあたりがテクニカル系のとっつきづらさの原因そのものなのではないか。
しかしこのアルバムには圧倒的「邦題」があった。これはテクニカル技術に溺れる、世界観に浸るという聴き方以外の可能性を示唆している。すなわち自らの厨二心を掘り起こし広げるという方法論を示しているに違いない(誇大妄想)。実際リッチな演奏からはいくらでも妄想を広げる糸口があり、脳内イメージが先行して暴走することも多々ある。しかし脳内のイメージと音を繋げるという意味でとても面白く聴くことが出来たし、書いてて結構楽しかった。別の音楽聴くときにも結構活きるんじゃね(弊害とも)。しかし万人にはお勧めしない(出来ない)。

【音楽レビュー】Pekka Pohjola - Visitation(1979)

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WigwamやMade In Sweden、またMike Oldfieldとの共演で知られるフィンランドマルチプレイヤーPekka Pohjola(ペッカ・ポーヨラ)の1979年ソロ作。個人名義では4作目。
ジャズフュージョンプログレッシブ・ロック双方の要素を持ち合わせた全編インストのアルバム。
本作ではベースとピアノをプレイしているため、所々でベースソロのようなベース中心的な展開が出てくる。
ホーンセクションとオーケストラによる厚みのある音作りも特徴か。
ジェントル・ジャイアントなどポップなプログレが好きな人は好んで聴けそうな気がするが、不思議なメロディ、音作りにはオリジナリティがあり、また魅力的でもある。

Track List////////////////////////////////////
#1 Strange Awakening
#2 Vapour Trails
#3 Image Of A Passing Smile
#4 Dancing In The Dark
#5 The Sighting
#6 Try To Remember
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曲紹介

#1 Strange Awakening
悲しげな低音、そして不穏なピアノテーマから始まる、暗黒なプログレ曲。 テーマのピッチ外しによる不協和音と最後の1音外しから展開してサックスとベース、ドラムの登場、ホーンセクションがテーマを奏でる。テーマが微妙に変化したと思うと転調、ベースとピアノが一度浮かび上がるが、再度メインテーマへ。先ほどより1オクターブ上がっていて妙な高揚感を感じる。ここからサックスソロが一瞬の情熱を彷彿とさせて行くも、またメインテーマへ回帰。細かく変化しつつも繰り返され、シメのベースソロに突入。ホーンセクションがあくまで控えめにこれを引き立てる。最後にメインテーマに戻ってブレイク。
散々暗いなどと言っているが静謐さと音は柔らかさがある。個人的フェイバリット◎。 暗さとポップさの同居は謎のバランス感覚。不思議系だ。


Pekka Pohjola - Strange Awakening  

#2 Vapour Trails
タイトなドラムからスタートするジャズ・ロックソング。アンドリュー・ラティマー系?の暖かみあるフュージョンギターが特徴。ギター、サックスなどが代わる代わるソロをつとめて行く。先ほどの曲とはうってかわってキレッキレの技巧を発揮している。脳内に風景などはあまり浮かばない感じだった。


Pekka Pohjola - Vapour Trails 

#3 Image Of A Passing Smile
フルートの美しいメロディから始まる。オーケストラも合わさり壮大なイメージが脳内に描かれだす。ギターとピアノが合わさって登りあがっていき、ひとつの頂点に達する。
またくらいメロディに…と思いきやいきなり転調。軽快な手拍子とドラミング、怪しいメロディライン。北欧の美しい自然に囲まれていたつもりがいつの間にか、街に行き交う人の群れに放り込まれたかのような気持ち。
とここからさらに転調!裏打ちビートでとっても身体が軽い。しかしサックスとベースの音色は別に明るくはないのだが…よくわからない不思議なひょうきんさがある。跳ねるようなベースソロ。途中からギターも現れて掛け合いがなされる。なんか胡散臭いな〜。ギターちょっとブライアン・メイっぽいかも?そういう例えはあんまりよくわかりません。ただやっぱり不思議ソング。


Pekka Pohjola - Image of a Passing Smile

#4 Dancing In The Dark
ちゃかぽこドラムでタイトルに反して暗い感じ全くしない。ちゃかぽこ部のベースフレーズはMother2の敵戦闘曲っぽいかも。もしかして元ネタ?!#3から通貫したユーモラスさ。ギターとピアノのフレーズの雰囲気が少しジェントル・ジャイアントっぽいポップさかもしれない。
おまけ(言わんとしてたのは1曲目です)
#5 The Sighting
ワルツのリズムで始まる本曲。サックスによる熱情は曲の緩急を際立たせている。The Sightingとは「目撃」の意味であるが、一体何を目撃したのだろうか…。捉えどころがなく、表現が難しい。ふわふわとしているうちに終了してしまう。最終曲に対する序曲的な役割があるのかもしれない。


Pekka Pohjola - The Sighting 

#6 Try To Remember
ギター、そしてオーボエから静謐なスタート。オーケストラも次々に参加し叙情的な雰囲気に包まれて行く。尋ねども忘れゆくものに対する哀愁、無常観のような儚さがイメージされる。弦楽器が美しいフレーズを弾ききると2分半にわたるイントロが終わりを告げる。何か和楽器?による3拍子のポリリズム、ミニマルなフレーズの繰り返しが現れる。ドラムとベースは4拍子をゆっくりと進んで行く。オーケストラが次々と集まり、演奏は厚みを増す。そして次第に高まるホーンセクションが壮大な雰囲気を演出、場の高まりが到達点に達すると緊張感はそのままにベースが感情豊かに表現して行く。ドラムも急き立てるようにベースとならびたつ。再び現れたホーンセクションが壮大にブレイクしアウトロへ和楽器のミニマルフレーズがブレイク後にも余韻を残しつつも収束する。この「Visitation」の終わりに相応しい旅情、儚さ、壮大さが同居した名曲である。

【書評】一揆の原理 呉座勇一 著 (ちくま学芸文庫)

 本日取り上げるのは呉座勇一 著「一揆の原理」(ちくま学芸文庫)でございます。後年に出版された加筆版です。
 

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 タイトルからも分かる通り、この本は歴史系の書籍です。
大河ドラマは好きで見てるんですが、オンタイムで見ながらTwitterやるとめっちゃ捗るんで歴史系のクラスタの人をちょこちょこフォローするようになって、それから歴史系の情報が流れてくるようになりました。
 
 そこでよく著者の呉座勇一さんの話題が流れてくるのだけど、そこで聞きかじったところによると未だ39歳という歴史学者にしては若いであろう年齢にも関わらず、47万部のベストセラーを飛ばして大活躍中のお方らしい。ちらっと検索して覗いてみたら他の歴史研究者の突っかかりをズバズバ捌いておられた。新進気鋭そのもの!!こりゃすげえ、ヒエ〜
http://agora-web.jp/archives/author/gozayuichi(アゴラ-言論プラットフォーム) 
 
 私としてはミーハーな興味を持って呉座先生の本を読んでみたい!むしろ読まねば!と思ったので、デビュー作に当たる本書を選んだっていう経緯です。ちなみにベストセラーの方の「応仁の乱」も読みました(ちょっと難しかった)。なので呉座先生の本は2冊目です。
 
 
 本書のテーマとしてただ一揆を昔の出来事として捉えるというのではなく、東日本大震災原発問題,アラブの春,ひまわり学生運動,雨傘運動,SNSなど現代の出来事とも照らし合わせ一揆の原理」を現代に活用していこうと言う点が挙げられます。歴史上の話題に終始するわけではないため、興味深く読むことができました(まあこれらの10年代イベントももはや昔の出来事になりつつありますが)。
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 内容のもっとも核になる部分は、一揆マルクス主義的な反権力のデモという風に見るのでもなく(百姓一揆)、また中世の非合理性、すなわち宗教的な信仰心を過信しすぎるでもなく(一味神水)、一揆の本質は人と人の繋がり、助け合いであり契約さえすれば2人の繋がりも「一揆」になるということなのです。一揆」は「契約」なんです。実際中世には神仏的な信仰が大きな意味を持っていた一方で高度な契約社会でもあったという事実は自分の中のイメージをガラッと変えました。
 
 細かい引用文書の内容とかいちいち引っ張ってこれないのですが、実際に読んでみると、様々な一揆の事例など紹介されていて確かな説得力を持って伝わってくるはずです。しかも歴史の知識がなくてもわかるように引用されています。わかりやすい!
 
 
 歴史系のテーマってどうしても一般の読者の興味を引きにくいだろうから難しそうだなあ、って読んでて感じました。
でもこの書籍は読んでてとても面白く引き込まれるような魅力があると思います。
それはやはり「歴史研究を現代に活かすような親しみのある捉え方をすることに意義がある」という呉座先生のスタンスへの共感と言う部分があります。自分も(理系の)研究しているから分かりますが、研究の意義って意外と多様で、成果が直接社会の役に立つ研究もあれば、学問的に必要な研究というものもあります。それぞれの意義は異なりますが、それをはっきりさせておくことは非常に大切です。最近話題のブラックホール撮影だって、それ単体では「何の意味が?」って感じますが、宇宙の出来方が分かってくると、それが最終的には地球を含め自分たちの成り立ちにも繋がってくるという意味で非常に重要な意義があるわけです。研究の土台となる部分がしっかりしていればそれだけ研究も説得力を持って伝わってきます。
 
 自分は歴史クラスタとは言えない一般人ですが、本書の内容はこれからの生活にも活かしていくことのできる豊かなものだったと思います。
また個人的には分析厨みたいなところがあるので、面白く感じる理由を分析して個人的に活用していきたい笑。
 
  •  そもそも「一揆」に対する偏見が存在
 読者が持つ一揆に対するイメージが「デモ」「暴動」「反権力の民衆運動」といったように偏ってしまっていることをしっかりと踏まえ、読者の理解度に立脚して話を組み立てている。またその理解度を利用し、「人と人の繋がり」という意味での一揆とのコントラストを大きく取っている。読者は自身のイメージと実態との相違という「裏切り」を体験する。
 
  • 一揆」と現代の「SNS」の関係性
 過去のものであり、身体の外にあった「一揆」という存在が、その実態を明らかにすると、SNSという対応項によって現代および自分自身と関係付けられる。その意外性。また読んできた内容を今後に役立てていくことができるという有益性は読者の意識をステージにひきずりあげる。読者が普段歴史に触れていなくても興味を持てる内容であり、また逆に歴史に対する興味を喚起出来るテーマでもある。
 
  • 呉座先生の圧倒的明快さでなされる痛快な表現
 私が普段抱いている漠然とした疑問や意見を明確な表現で述べてくれる。
「それなのに震災が起きた途端に『やっぱり家族で助け合うのが一番だよね~』などと言い出すのは、ずいぶんと勝手な話だと思う。かつての絆を取り戻し『古き良き昭和』に回帰するというだけでは、問題の解決にはならないのだ。」とかです。気持ちえ〜(平成生まれ)。
 
  • 既往研究や既成概念に対する論理的な批判
 歴史には詳しくないけど主張には説得力があるように感じるし、人が論破されているのを見るのはちょっと爽快なのであった。ただ本書内でも説明されていたけど、昔の研究が現在よりも質が良くないものであるとしてもそれは当たり前のことなのだ。だから当時にその人が何を考えていたのかを考えることの方が大切なのだと思う。当たり前のようであって見逃しがち、もしくは軽視しがちな視点のように思われた。
 
 
 最後の一点は、歴史から学んでどう活かしていくかっていう視点において、特に感銘を受けました。歴史には既にある事実の他に、時代ごとになされて来た解釈がある。その点において、歴史学はいま現在も生きていて変化するものを扱っているとも言えるのではないでしょうか。
(身の上話ですが、特に趣味の音楽とか懐古的な嗜好を持っているところがあるので、これは少し反省する必要がありそうだと思って来ました。当時と現在じゃ全く状況が違うから評価のされ方も違うよなっていう意識は欠けていたような気がします。反省)
 
 歴史の知識がなくても、面白く読め、現代的な意義にも溢れる一冊でした。
 
一揆の原理 (ちくま学芸文庫 コ 44-1)

一揆の原理 (ちくま学芸文庫 コ 44-1)

 

In The Court Of The Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿) - King Crimson

今回は前回の続きで私のプログレ沼への2歩目となった"King Crimson"の"In The Court Of The Crimson King"について書きます。

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通称:宮殿

今更解説なんて不要なくらいですが一応。

1969年(!!)発売の"King Crimson"の1stアルバム。

圧倒的顔面ジャケ

このアルバムからプログレッシブロックがはじまったっぽい。

 

ちなみに現在絶賛放送中ッ!!ジョジョの奇妙な冒険〜第5部 黄金の風〜」にも登場してるぞッ!!

ジャケットからの影響受けすぎだろ荒木先生!!

でもこのデザインは好き

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ジョジョ5部で活躍中の同姓同名のお方

Track List

#1 21st Century Schizoid Man☆

#2 I Talk To The Wind

#3 Epitaph

#4 Moonchild

#5 The Court of The Crimson King

 

Personnel

Robert Fripp-guitar

Ian McDonald-reeds, woodwind, vibes, keyboards, mellotron, vocals

Greg Lake-bass guitar, lead vocals

Micheal Giles-drums, percussion, vocals

Peter Sinfield-words and illumination

 

 当時まだ活動中だった"The Beatles"の"Abby Load"をチャート1位から蹴落としたって有名な逸話がありますがあれ事実無根だったみたいです(汗)

だがそんなことはもはやどうでもよく

誰もが認めるプログレッシブロック圧倒的名盤!! 

 

#1は「21世紀の精神異常者」って邦題がついてて

プログレファンの間では通称「21バカ」って呼ばれてる。ヒドいけどわかりやすい。

ただこれがめちゃんこにかっこよい。21世紀っていう漠然としたディストピア感を土台に繰り出される暴力的なイントロ!

これが69年ってマ?

よくわからんエフェクトのかかったこれまた格好良いボーカルが曲タイトルまで歌い上げるともう一度イントロのフレーズを繰り返し、ギターの唸り挙げとともに長い間奏パートがスタート。テンポも上がってテンションもアップ。2つのフレーズをギターサックスが揃って進む。どんどんテンションがうなぎのぼり。ギター、ベース、サックスが入れ替わり立ち代わりソロを演じていく。ドラムはありえんタイトさで叩きまくっている。なんてカッコよさ。。。

間奏ふたつ目のフレーズに戻るが、こっちのテンションは上がりまくってもう元には戻れん!難しそうなフレーズをギター、ベース、サックス、ドラムがばっちしのタイミングで合わせて間奏1つめのフレーズに戻ったのち、再度イントロのフレーズに回帰!久しぶりのボーカルが炸裂!演奏は最終局面に突入し、全員が精神異常者になったかのような弾きまくり!発散していくように曲が終わる。。。

一生聴けるしいつ聴いても感動する最高の曲。

これに出会ったせいで人生狂ったと確信して言える。

 

#2は「風に語りて」曲の尺はそうでもないがアルバム内の小曲的立ち位置で「21バカ」で上がりまくったテンションを落ち着かせる。イアン・マクドナルドのフルートが素晴らしい美しさ。詞も哲学的だ。でもやっぱりちょっとディストピア的な雰囲気ない…?

#3は「墓碑銘」#2から続いて太鼓の音でイントロ。曲のテーマがクッソ暗い。やっぱりディストピア?でも現代や未来の話じゃあないのかな。サビで必殺の"Confusion will be my Epitaph"のフレーズ。かっこいい。アコギとメロトロン、そしてグレッグ・レイクによるボーカルの哀愁がすごい。歌メロがはっきりしてるから日本人ウケしそうやな〜なんて少し冷静になってしまう。やっぱり#1の方が好きやな〜って思ってしまう。年重ねたら好きになりそうな気がする。間違いなく名曲ではあるので。今後に期待。

#4"Moonchild" #2的小曲ポジと見せかけて12分もありめっちゃ長い。前半部では印象的な美メロで脳内に景色が現れてくる。メロトロンの逆再生?がとても良い雰囲気を出している。この部分は好きなんだけど…後半部分では「宮殿」を聴くときの障壁ランキング世界一位間違い無し催眠サウンドが繰り出され、メロディのない浮遊感を正味9分ほど味わわねばならない。この曲前半だけでよくね?って思うけどB面の尺が足りなかったんですかね?インプロビゼーション(即興演奏)だと思えば後年中期クリムゾンの布石と言えなくもない??

#5「クリムゾン・キングの宮殿#4長くて油断してたら唐突に始まる曲。ドラムから入ってメロトロンが唸りあげる。イントロのメロディで気付いたらクリムゾンキングの宮殿に立たされ、怪しげなパペットやらクイーンやらウィッチやらがいる空間へ。怪しい儀式でも始まりそうだ。再びメロトロンが唸りあげ、ドラムが軽快に鳴る。イントロのメロディを繰り返し、再び歌パート。もう一度イントロメロディに戻ったのちにフルートが登場。ギターが少し#3「エピタフの世界を垣間見せながら静寂なパートが進む。最後の歌のパートに入り、やはり"king"の詞からコーラス。キィ〜〜〜〜んあ↑〜あ↑〜あ↓〜

一度曲が終了したと見せかけて、笛の類?がピロピロと現れる。次々にフルートなどが登場し、ドラムが突如響きだすとワントーン上がったメインフレーズをもう一度!キーボードなども増えて大円団!感動的なラストと油断していると各楽器がそれぞれ唸り出し、唐突に混沌へと吸い込まれていって呆気にとられる。不思議な世界。怪しすぎる!

こういう一回終わってからもう一回現れる"Strawberry Fields Forever"的な展開好きです。

 

プログレッシブロックの定義に「クラシックとの接近」というのがありましたが、キングクリムゾンの場合は、「ジャズとの接近」ジャズロックというジャンルにプログレ要素が多く含まれているようにジャズに必要な技巧がロックと融合することも、プログレの超絶技巧という特徴を作ったんだなと割と最近理解しました。次のアルバム以降しばらくはジャズよりですしね。

あとメロトロン使用しているっていうのはやっぱり大きいですね。耳バカなんで以前はオーケストラでも使ってるのかと勘違いしていましたが(汗) 独特なローファイ音から来る雰囲気が音世界に大きく貢献しているように感じました。し後発にも影響大でしょうね。

 

 そういえば前回の"Yes"の"Fragile"では最後にSpotifyのリンクを貼ってみたんですが

(いろんな音楽ブログで貼ってあるから1回やりたかったw)

私はSpotifyのヘビーユーザーでめちゃんこお世話になっているのですが。

キング・クリムゾンSpotifyでは(ほとんど)聴けません!!悲しい!!

お前らのせいでこちとら万年金欠だよ!!

 

そんな金欠学生に厳しいクリムゾン

まあフリップ的には対価は払えよってことなんでしょうな〜。

さすが大量のライブアルバムを売りさばいてきただけあって商売が上手です()

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5曲しか登録されてないのに40万人フォローしてるの面白すぎんか??

 

ただこのアルバムに関して絶対に「買い」ですけどね。


中のデザインもキモいので(褒め言葉)

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こういうの好きな人と友達になりたい

紙ジャケがおすすめです。

 

クリムゾン・キングの宮殿

クリムゾン・キングの宮殿

 

 

中期3作品もオススメです。 

geeked.hatenablog.com 

Fragile(こわれもの) - Yes

音楽レビューを書くにあたって何を最初に持ってくるかは重要だと思って、少し悩んだんだけど、自己紹介的な意味合いを持たせたいのもあってYesにしてみた。ちょうど惑星ジャケだしね。

 

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Fragile

確か中学の頃にはビートルズiPhone付属イヤホンで聴いてたようなやつだったんだけど、高校に入ってジョジョのアニメ1部が始まったんですね。そのEDテーマとして使われていたのが、#1のRoundaboutでした。

物語のシリアスな展開にマッチしたイントロギターで「神ED」などとよく言われていましたね。

今見ても作画・構成など力(と金)の入れ方が半端なく、他部と比較しても完成度が高いな〜と思います。こっから私はジョジョラーとして文庫版の漫画を全部揃えたんですが、一方で音楽の方にも強く惹かれていきました。

 

そもそもプログレッシブ・ロックとは?

それまではビートルズを聴いていたのもあって、カッコいいフレーズの多さは自分の趣味にかなりマッチしていました。ただ当時はまだ音楽に対する知識が今以上にほとんどなかったので、Wikiとか見て調べました。以下がその説明。

 

 

演奏上手くて育ちも良くて頭のいい人たちが、労働者側にあったロックを芸術の域に引き上げていったというような感じです。この時何これめっちゃメンドくさそう…とはあんまり感じなかった時点で同世代人と趣味が合わなかったのはお察しでした。

これが私の求めていた物では...?と感じた私はこの後「プログレ」を手がかりに音楽探求の旅に出るようになりました。結局初めて買ったプログレのアルバムがFragile!祝プログレデビュー。

 

Fragileについて 

1971年発売、Yesの大ヒット作品

幻想的なジャケットはロジャー・ディーンによるもので、他のプログレ作品のジャケも多く担当しています。

 

アルバムは大曲4つとソロ曲で構成されていて、当時のプログレアルバムにはよくあるタイプのアルバム構成だと思う。

#1は言わずと知れた大ヒット作。幻想的な曲構成が素晴らしいし、楽器同士の絡み合いも最高。曲自体の印象はウェイクマンのキーボードによるところが大きそう。サビのハウのギターとスクワイアのブリブリベースがとても好き。ハウのギターはソロ曲#8でも堪能できます。一部ではハウはギターが上手くないとか言われているらしいが、私はめっちゃ好き。

他の大曲#4と#9で#4は確か南極で凍死する冒険者の歌かなんかでテーマの暗さとハードなサウンドが魅力。#9は車のCMソングにもなっていたけれど、キング・クリムゾンの「21世紀の精神異常者」に対する返歌のようなものだと言われている。静と動の緩急が激しい名曲。初めて聴いた当時はこの辺りのハードな曲がかなり琴線に触れていた。

この後イエスは幻想的なサウンドや哲学的なテーマを持った作風になっていくが、私はハードかつプログレッシブなサウンドを欲していた。結局キング・クリムゾンなどへと食指を伸ばしていくが、それはまた別の記事で書いていきたいな。