メビウスの惑星

雑食性消費者の宇宙遭難日記です。プログレ入門者

Hybirs(1992) - Epilog(1994) - Buried Alive(1996) - Viljans Öga(2012)/Änglagård

エングラガーことスウェーデンの伝説、Änglagård アングラガルドです。

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Anekdotenとともに90年代のプログレ、シンフォ熱を再燃させた元凶といわれ、暗すぎるジャケット、読めないスウェーデン語、少なすぎるバイオグラフィー、店舗で見かけなさすぎる音源等々の影響で伝説的な扱いを受けている…と思われるが、近年再結成し、2012年作3rdアルバム、Viljans Öga(2012)をリリースしていてとっても熱い。Bandcampのアカウントも設置されていて、私はここ経由で2ndと3rdのデジパックを入手した。また、SpotifyではライブアルバムのBuried Alive(1996)が聴ける、というかSpotifyじゃあこれしか聴けない。なんで?

大曲+間奏的小曲の志向、メロトロンの採用、多彩な変拍子フレーズと転調、クラシックに接近したシンフォサウンドなど、典型的プログレの特徴を満載した重戦車。特にメロトロンを採用した叙情性のサウンドは(中期)キング・クリムゾン系と見做されることが多い。のだが、実はそうでもないと今は思っている。

ベースリフによる前進と、手数も多く変拍子を多彩に盛り込んだ強力なリズム隊、時々フリップの影響を覗かせるギターフレージングなどは確かにクリムゾンの影響を感じさせる。だが、テクニカルな変拍子+よく練られたメロディの基本公式を、絶えず変化させながら、しかも中だるみすることなく、全曲通しで構築してみせていることが最大の美点である。バンドアンサンブルにはプログレ黎明期のような黄金の輝きに満ちた魔法がかけられている(自分の経験から言えば、YesのFragileのようなワクワク感であり、時とともに失われてしまったものである)。これすなわち、構成美タイプのバンドということであり、インプロ的なクリムゾンとは根本的に異なる点だと考える。むしろ宮殿クリムゾンやある意味Yesに近い。シンフォニックサウンド≒クラシック的完全な構成の美を追求したのだろうか、などと考えたりもした。

クリムゾン的というとパラノイア的なイメージを強くしがちだが、実際のバンドは客を楽しませることにかなり軸足を置いたエンターテイナー的な性質を持っているのも特徴だと考えられる。

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BandcampでCDを買うと一緒に風船がついてくるが、使えるワケなくないか?

AnekdotenはÄnglagårdに比べれば遥かにシンプルなリズム(それでも変拍子)、オルタナ、メタルといった70年代になかった要素をプログレに融合して、次世代への方針を示すことに成功した。一方、Änglagårdは90年代という時代において、純粋に70年代黄金期プログレサウンド、クオリティで作品を作り上げることが出来たことが、ほぼ奇跡的なことであり、皆が忘れかけていたプログレの美徳を思い起こさせたのだろう。

Hybris(1992) 邦題:傲慢

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CDが売ってないのでまだ聴いてません。聴いてから書く。

一応、Bandcampはデジタル音源のみあり(他はデジパック売ってるのになんでないの????)、Youtubeもあるけど、アングラガルドはこれで聴いたら負けっていう謎の意地がある。近年発売されたボックスセットは高いしそもそもほぼ売ってない。ぼったくり価格じゃないCDがあったら誰か教えてほしい、切実です。

Epilog(1994)

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うっすら人の顔が見えるコワイジャケット。LPサイズでみたら最初に人の顔に気付かなくて、めっちゃびっくりしそう。Hybrisは聴いていないけれど、多分本作も甲乙つけ難いくらいに完成度の高い作品。Bandcamp経由で購入したが、リマスター版の2CD音源であり、#3の本来の姿が収録されたCDが付属していた。

Items

  1. Prolog(2:01)
  2. Höstsejd(15:32)
  3. Rösten(0:14)
  4. Skogsranden(10:49)
  5. Sista Somrar(13:11)
  6. Saknadens Fullhet(2:01)

Buried Alive(1994) 邦題:ライブ1994 早すぎた埋葬

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本作はライブアルバムで、94年のロサンゼルスで開催されたプログレッシブ・ロック・フェスティバルの演奏を収録している。フルートとキーボードの音がこもっているが、個人的な旨味成分ことリズム隊の音圧は十分あるのでまあOK。よく言われているが、演奏はとにかく上手いということがわかる。

Items

  1. Prolog (2nd)
  2. Jordrök (1st)
  3. Ifrån klarhet till klarhet (1st)
  4. Vandringar i Vilsenhet (1st)
  5. Sista Somara (2nd)
  6. Kung Bore (1st)

衝撃的な事実ですが、旧日本版の解説によれば、「当初の企画通りだとすれば、プロッグフェスト'94の前日のステージのコンプリートになっているはず」であると書いている。当日のセットリストも併記されていて、以下のようになっている。

  1. Prolog (2nd)
  2. Jordrök (1st)
  3. Höstsejd (2nd)
  4. Ifrån klarhet till klarhet (1st)
  5. Vandringar i Vilsenhet (1st)
  6. Skogsranden (2nd)
  7. Sista Somara (2nd)
  8. Saknadens Tullhet (2nd)
  9. Kung Bore (1st)

赤字が音源化時に省略されている箇所だが、これ当時の持ち曲ほぼ全曲じゃん!っていう。当時のライブに参加したかったという気持ちと、いつか完全版を2CDでリリースして欲しいという気持ちですね。どうせ録音してあるんだろう???

Viljans Öga(2012)

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ほぼ20年越しの堂々たる復活作。20年もかかってジャケのうっすら顔がめちゃくちゃはっきりするように。前作から作風をそのまま延長してきてて、待ち焦がれていた、というよりは突然の復活に不意を衝かれていたファンを喜ばせている。以前に比べて#2などギターをフィーチャーした曲を始め、ギターの出番が増加している印象。反面叙情性は若干薄れて感じられるような気もする。前2作が化物だけな気もする。ギターはフリップ的なフレーズも多く、ハードロックのような印象を与えるような箇所もある。ただ、#4の終盤の展開とアウトロのあっけ無さはイマイチ納得できない。。。 

Items

  1. Ur Vilande(15:47)
  2. Sorgmantel(12:06)
  3. Snårdom(16:15)
  4. Langtans Klocka(13:22)