有名すぎますね。その名の通り3枚目となるソフト・マシーン のアルバム。ジャケ写がかっこいい。個人的「LPレコードで飾って置きたいジャケ写」ランキングは堂々の1位。LP再生機器持ってないけど。
バンド自体はカンタベリー ・ロック、プログレッシブ・ロック 、サイケデリック・ロック 、ジャズ・ロック、フュージョン として語られることが多い。
本作はジャズ色が濃く、プログレ とサイケの要素が混ざっているような感じか。
Wiki 調べたり名盤500選などを見るのは好きだし、愛読書でもある「ジョジョの奇妙な冒険 」 にも元ネタとして登場するもんで、バンド名もアルバム名も知っていたけれど、なんとなく取っつきづらくてよく聴いてこなかったのだ。
ジョジョ のソフト・マシーン は対象を薄っぺらにできる能力(絶賛アニメ放送中!)
結局ソフト・マシーン との出会いは昨年最後の来日 をするっていうニュースを聞いたところから。レジェンドが生きているうちに見られる機会なんてそうそうないので、ここぞとばかりにライブチケットを申し込んでしまった。聴いたこともないのに。
申し込んでしまった以上は会場でぼんやりするのも勿体ない。その場で聴いて咀嚼するのも得意ではない、だからし っかり予習していこうということにした。
「困った時のSpotify 」 で大体聴けるのでそれを聴いていこう。そうして色々通しで聴いた結果もっとも印象に残っている一枚がこれなのであった。
Track List/////////////////////////////////////////////////
#1 Facelift -Live- (18:45)
#2 Slightly All The Time (18:10)
#3 Moon In June (19:06)
#4 Out-Bloody-Rageous (19:11)
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Personnel/////////////////////////////////////////////////
Mike Ratledge - Organ, Piano, Electrc Piano
Hugh Hopper - Bass
Robert Wyatt - Drums
Elton Dean - Alto Sax, Saxello
Rab Spall - Violin
Lyn Dobson - Flute, Soprano Sax
Nick Evans - Trombone
Jimmy Hastings - Flute, Bass Clarinet
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4曲しか入っていないにも関わらず、70分オーバーの大アルバムだ。レコード2枚の面裏、A,B,C,D面の曲担当をそれぞれ当時のメンバー4人に振り分けた構成になっているためだ。だから各楽曲は20分に迫る大作となっている。即興演奏で大曲にしようってことなのか。それにしても思い切った感じがする。
Soft Machine - Third 1970[Full Album]
曲紹介
#1 Facelift -Live-
Bassの
" Hugh Hopper" の作。私の中にあるジャズの
ステレオタイプ からは想像も出来ないノイ
ジー さと不安定なテーマ、そしてライブならではとも言えるローファイ感。もっとも
ライブ版とはいっても、大きく分けて2つの演奏をつないでいる。前半部分は グモグモとした形状し難い楽器同士の掛け合いから始まる。5分程度から印象的なメインテーマに突入。堅牢な西洋(もしくは中東)式城郭を前に行進する軍隊様なイメージを覚える。7分時点からサックスが唐突に唸り挙げ、ファズ・オルガンが次のテーマへと突入。サックス、オルガン、ベースが掛け合い熱いインプロパートが演じられる。10分時点でオルガン・サックスが再度テーマを奏でると1分ほどの
クロスフェード 部に突入し後半部分へ。
後半部はフルートなどによるしばらくの静寂の後、偏執的ベースリフに支えられたパートが続く。サックスのソロがフェードアウトしリズム隊とピアノだけになって数回テーマを繰り返すと突如イントロのテーマに回帰!!曲は終盤に差し掛かる。巻き戻しを利用したカオティックなパートからそのままフェードアウトして終了。
転調が激しく、即興演奏的なパートもありジャズ部分がある一方で、クロスフェード を挟んで曲中のテーマが回帰していく構成などは確かにプログレ 然としている様にも思える。 ベースとオルガンの音色が曲の暗くてうねるような雰囲気を醸成している様に思える。そしてライブ的なローファイ感からもくる独特な音は他であまり経験したことのない類いだった。
名曲だと思う。
#2 Slightly All The Time
鍵盤の"Mike Ratledge" 作。はじめはベースリフとドラムスのリズムが支えながら、管楽器がソロを奏でていくパート。ソロと同等かそれ以上に暴れまわるドラムスが間違いなくロックを聴いているという確信をもたらしてくれる。中間でサックスのメロディから唐突に転調する。テンポ・アップ。ドラムスの細かく刻まれるハイハット とベース、オルガンの短くも印象的なリフのパートへ。さらに9/8拍子のパートへ移行。ドラムスとエレピに支えられ、サックス、そしてオルガンが熱情のソロを演じる。そしてサックスとベースにより後半部分のテーマが編み出されていく。Faceliftにも通底する雰囲気を感じるテーマで曲終盤に再度登場する。うねるオルガンとベースに支えられ、再度サクセロがソロを演じる。エレピが登場する勢いで演奏が加速し、ベースとサクセロ、そしてオルガンが疾走する。そして曲終盤、後半部のテーマが再度登場し、爆ぜるように演奏がブレイクする。
#3 Moon In June
Drumsの
"Robert Wyatt " の作。C面まできてようやくボーカルが登場する。#1#2が聳える山脈のような曲だったのとは対照的に、
Robert Wyatt のボーカルは美しく、優しい安堵感に満ち溢れる。ホーンセクションが登場しないからということも理由なのかもしれない。オルガン、ベースそしてWyattのボーカルが、いくつものVerseが折り重ねて行く。歌詞ははじめに登場する”On a dilemma between what I need and what I just want”がテーマになっている。Verse1,2,3あたりからは男女関係の歌詞のように取れる。YouとSheが別々に登場するので、これは三角関係の話なのではないだろうか。実際”
I’ve got my bied. You’ve got your man"という歌詞から、お互いに相手がいるにも関わらず惹かれあっているのだろう(Birdは女の子の意味があるらしい)。Verse1,2を経て1分30秒からのベースソロは優しさが迸るようだ。歌詞を確認した
"Genius" によると、このベースソロはWyattが演奏してるらしい。本当かな。Verse4から主人公はニューヨークに住んでいるが、故郷たる”Home"に帰りたい気持ちが描写される。TreeやRainを恋しく思う気持ちから、”Home”=英国を懐かしく思う気持ちだろうか。実際West Dulwichというロンドンの地名をあげている。Homeが心安らぐ場所というのを意味するものであるとすれば、これは"She"と"You"の対比の構図を踏襲していると見ることができるかもしれない。Verse5では唐突に曲、そして音楽のあり方?に対するメタ発言がなされる。"Background Noise”や”Leisure time, isn’t it?"など何やら自虐的な発言にも取れるが、Wyattらしさ以外には真意はよくわからない。深い意味はないってことなんだろう。続くVerse6,7はオルガンの伴奏が美しい。
The Beatles の影響を感じる英国らしいオルガンだ。愛と憎悪は表裏一体なのだが、虚しくも時は過ぎ、”She"の距離も離れて行く。曲は一つの感情的到達点に達している。最終的に”You"を取るのだが、”Until I get more homesick”という歌詞は再びこのような事態が発生することを予測していることを示しているように感じられた。だからこそ、”Before this feeling dies, remember how distance tells us lies "なのではないのだろうか。
とにかく曲はここからもう半分、演奏パートである。短いギターオルガンの演奏パートを挟み、ブルー
ジー な展開に突入したと思いきやすぐにテンポアップ、Ratledgeによるオルガンソロに突入する。Wyattによる
スキャット も加わり演奏はヴォルテージを増す。13分あたりの妖しい
スキャット は
The Beatles の”Long, Long, Long"のエンディングを思い出す。混沌としたところからブルー
ジー な雰囲気のパートに再び入って行く。オルガンが優しい音色で支えているが、徐々に怪しい音に変化して行き、再び混沌の即興パートに。形のあるメロディが登場しないまま、曲は終了する。
歌詞についてはありがちな思考ではあるが、アルバム”Forth”で”Soft Machine”を脱退し、自身のバンド”Matching Mole”を立ち上げて行くことになるWyattの内面を写しているという見方もできるかもしれない。実際はその辺り詳しくないので、ほんの推測に過ぎない。とにかく#1#2とは好対照をなす、優しくも哀しい名曲。後半はジャズ的な成分も多くなるが、サイケ的な成分、
アバンギャルド さなどはWyattのセンスなんだろうか。
#4 Out-Bloody-Rageous
"Mike Ratledge" 作。エレピによる混沌とした音宇宙が少しずつ姿を表しながら始まる。5分ごろまで浮遊間に酔いしれていると、突如ピアノとベースによるリフが登場する。そして管弦楽 器がメロディを奏でる。そしてオルガンによるアグレッシブなソロ演奏が続いて行く。15/16拍子によるアクセントの効いたリフが繰り返される。サックスが交代するように登場しベースリフだけになると、管弦楽 器らによるソロとなる…と思いきや転調。オルガンによる宇宙が再度垣間見えたのち、ピアノによるテーマから曲は再開。宇宙オルガンとピアノに支えられた上でサックスが渋いソロを演じる。ヴォルテージが上がるというよりは気高い荘厳さに包まれて行く。全ての楽器が揃って新たなリフを奏でると、ベースの音でブレイク。そして復活するエレピ。幾つもの短いリフが重なり合い混沌となり、そしてゆっくりフェードアウトして行く。
終わりに
とにかく大曲の構成と、即興演奏的な緊張感(特に1,2曲目)があって敷居が高い印象が強い。しかし敷居の高さとクオリティが直結している感じがする。頑張って聴くとその分感動するみたいな。しっかり集中して聴くのが大切だと思います。
ちなみにライブに申し込んだ当時は知らなかったのだが、
ソフト・マシーン の編成はかなり激しく変化しており、2018年夏、すなわち来日ライブ時は特に
フュージョン 期、"Bundles"や"Softs"という時期に近い編成だった。でも準備で聴いているうちに"Third"はすごいかっこよいけれど、"Bundles"や"Softs"はあんまり趣味じゃないなって気付いてしまった笑
ライブ会場は個人の席があるタイプでこれもまた慣れなかでビールを飲んだし、周り年上の大人だらけだったし、メンバーみんなおじいちゃんでそこまで演奏キレキレでもなかったり、ロイ・バビントンのベースが腹に乗っかっていたり、即興演奏の真骨頂の部分で興奮してみたり、そうしたらライブが1時間ちょっとで終わってしまっていたり。まあ、うん、いい経験になったかな笑
次にレジェンドが来日するって聴いても速攻で申し込むことはないと宣言して終わります。