メビウスの惑星

雑食性消費者の宇宙遭難日記です。プログレ入門者

【音楽レビュー】Pekka Pohjola - Visitation(1979)

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WigwamやMade In Sweden、またMike Oldfieldとの共演で知られるフィンランドマルチプレイヤーPekka Pohjola(ペッカ・ポーヨラ)の1979年ソロ作。個人名義では4作目。
ジャズフュージョンプログレッシブ・ロック双方の要素を持ち合わせた全編インストのアルバム。
本作ではベースとピアノをプレイしているため、所々でベースソロのようなベース中心的な展開が出てくる。
ホーンセクションとオーケストラによる厚みのある音作りも特徴か。
ジェントル・ジャイアントなどポップなプログレが好きな人は好んで聴けそうな気がするが、不思議なメロディ、音作りにはオリジナリティがあり、また魅力的でもある。

Track List////////////////////////////////////
#1 Strange Awakening
#2 Vapour Trails
#3 Image Of A Passing Smile
#4 Dancing In The Dark
#5 The Sighting
#6 Try To Remember
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曲紹介

#1 Strange Awakening
悲しげな低音、そして不穏なピアノテーマから始まる、暗黒なプログレ曲。 テーマのピッチ外しによる不協和音と最後の1音外しから展開してサックスとベース、ドラムの登場、ホーンセクションがテーマを奏でる。テーマが微妙に変化したと思うと転調、ベースとピアノが一度浮かび上がるが、再度メインテーマへ。先ほどより1オクターブ上がっていて妙な高揚感を感じる。ここからサックスソロが一瞬の情熱を彷彿とさせて行くも、またメインテーマへ回帰。細かく変化しつつも繰り返され、シメのベースソロに突入。ホーンセクションがあくまで控えめにこれを引き立てる。最後にメインテーマに戻ってブレイク。
散々暗いなどと言っているが静謐さと音は柔らかさがある。個人的フェイバリット◎。 暗さとポップさの同居は謎のバランス感覚。不思議系だ。


Pekka Pohjola - Strange Awakening  

#2 Vapour Trails
タイトなドラムからスタートするジャズ・ロックソング。アンドリュー・ラティマー系?の暖かみあるフュージョンギターが特徴。ギター、サックスなどが代わる代わるソロをつとめて行く。先ほどの曲とはうってかわってキレッキレの技巧を発揮している。脳内に風景などはあまり浮かばない感じだった。


Pekka Pohjola - Vapour Trails 

#3 Image Of A Passing Smile
フルートの美しいメロディから始まる。オーケストラも合わさり壮大なイメージが脳内に描かれだす。ギターとピアノが合わさって登りあがっていき、ひとつの頂点に達する。
またくらいメロディに…と思いきやいきなり転調。軽快な手拍子とドラミング、怪しいメロディライン。北欧の美しい自然に囲まれていたつもりがいつの間にか、街に行き交う人の群れに放り込まれたかのような気持ち。
とここからさらに転調!裏打ちビートでとっても身体が軽い。しかしサックスとベースの音色は別に明るくはないのだが…よくわからない不思議なひょうきんさがある。跳ねるようなベースソロ。途中からギターも現れて掛け合いがなされる。なんか胡散臭いな〜。ギターちょっとブライアン・メイっぽいかも?そういう例えはあんまりよくわかりません。ただやっぱり不思議ソング。


Pekka Pohjola - Image of a Passing Smile

#4 Dancing In The Dark
ちゃかぽこドラムでタイトルに反して暗い感じ全くしない。ちゃかぽこ部のベースフレーズはMother2の敵戦闘曲っぽいかも。もしかして元ネタ?!#3から通貫したユーモラスさ。ギターとピアノのフレーズの雰囲気が少しジェントル・ジャイアントっぽいポップさかもしれない。
おまけ(言わんとしてたのは1曲目です)
#5 The Sighting
ワルツのリズムで始まる本曲。サックスによる熱情は曲の緩急を際立たせている。The Sightingとは「目撃」の意味であるが、一体何を目撃したのだろうか…。捉えどころがなく、表現が難しい。ふわふわとしているうちに終了してしまう。最終曲に対する序曲的な役割があるのかもしれない。


Pekka Pohjola - The Sighting 

#6 Try To Remember
ギター、そしてオーボエから静謐なスタート。オーケストラも次々に参加し叙情的な雰囲気に包まれて行く。尋ねども忘れゆくものに対する哀愁、無常観のような儚さがイメージされる。弦楽器が美しいフレーズを弾ききると2分半にわたるイントロが終わりを告げる。何か和楽器?による3拍子のポリリズム、ミニマルなフレーズの繰り返しが現れる。ドラムとベースは4拍子をゆっくりと進んで行く。オーケストラが次々と集まり、演奏は厚みを増す。そして次第に高まるホーンセクションが壮大な雰囲気を演出、場の高まりが到達点に達すると緊張感はそのままにベースが感情豊かに表現して行く。ドラムも急き立てるようにベースとならびたつ。再び現れたホーンセクションが壮大にブレイクしアウトロへ和楽器のミニマルフレーズがブレイク後にも余韻を残しつつも収束する。この「Visitation」の終わりに相応しい旅情、儚さ、壮大さが同居した名曲である。

実はWigwamもMade In Swedenも知らなかったが、Spotifyのおすすめ機能で出てきたアーティスト(Kingston Wallからのつながり、こっちもレビューしたい)。Spotifyのオススメ精度は本当にバケモンである。現代に生きてて、技術の恩恵を受けられてよかった〜と素直に思う。Spotifyではこのアルバムしか聴けないのが非常に残念だ。

#1が暗めのプログレだったので美味しくいただけるかと思ったら、後の曲はポップでユーモアのある音で正直ちょっと拍子抜けした。そう考えると#1も暗いながら分かりやすいメインテーマを持ってきていて、むしろ#2以降のポップさ、不思議なバランス感、ユーモアこそがPekka Pohjolaの本懐と言えるような気がする。しかしやはりこの不思議さ、多面的な魅力は引き寄せられるものがあり、非常に興味深い作品だった。是非他の作品も聴いてみたいと思う。