メビウスの惑星

雑食性消費者の宇宙遭難日記です。プログレ入門者

【音楽レビュー】CAN - Delay 1968 (197)

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回に引き続きCANのアルバム"Delay 1968"です。前回レビューの"The Lost Tapes"同様、このアルバムもアウトテイク集です。時期的には1stアルバム"Monster Movie"の時期のものですが、クオリティが全く未収録集に相応しくない傑作。まさに「遅れてやってきたオリジナルアルバム」という表現がしっくりくる、名が体を裏切らぬ一枚です。アウトテイクなので、荒削りな曲もありますが、のちのパンクやニュー・ウェーブを既に予感させています。時代の先を行く痛快さよ…。

Monster Movieと対比させてみると、曲のバリエーションはこちらの方が富んでいます。この時期には既に実験的なことを色々と試してみていたのだということがわかる意味でも面白い一枚です。あと時期が早いからかCzukayが元気な曲が多いのがちょっと面白珍しいところかもしれない。ファンキーな曲に合わせたブリブリのベースなどもあり。

#6,#7などはセッションアウトテイクのようですが、曲の終わり方が唐突であり、このアルバム唯一の残念ポイントと言えるかも。"The Lost Tapes"のように長尺で収録してくれていたら個人的にはもっと嬉しかった。ただ削った分、再生時間が短めなので、気軽に聴きやすいと言う意味では良くも作用しているかもしれない。You Doo Rightとか重すぎるときもありますからね。

 

 Songs

1.Butterfly

 不協和音的なKey.にMalcomのVo.の雰囲気がベストマッチ。初動でノックアウトされちゃう名曲。演奏を通じてMalcomのVo.が冴え渡っており、執拗な反復を含みつつも、フリーキーに羽ばたきまわり、創造性を発露させ、撒き散らしている。

2.Pnoom

 間奏的小曲。

3.Nineteen Century Man

 ファンク風味のギター。そこに乗っかっているIrminのバッキングKey.がめちゃくちゃ胡散臭い。勿論これは褒め言葉ですよ。グルーヴィーなCzukayのBa.も良い。Yakiは結構大人しめです。

4.Thief

 Michealのもの悲しいギター、Irminもギターに合わせて雰囲気を演出している。そして枯れかかってるMalcomのブリージーなヴォーカル。裏で意外とゴリゴリいってるリズム隊の方々。Monster Movieでいうとこの"Mary, Mary, So Contorary"的立ち位置。

5.Man Named Joe

 ちょっとR&B的な雰囲気(的外れかも)。CANの他の曲にはあまりない雰囲気のよう。Czukayが元気にうねる。Yakiがフィルインで普通に連打していて珍しい気がする。

6.Uphill

 リズム隊とVo.だけで進むようなスタート。Key.は不在で、ギターはバッキング的な演奏。かなりアップテンポだ。Vo.がフェードアウトしてギターも存在感を増していく。ギターとヴォーカルが並列で突き進む。ギターがうねり、ヴォーカルが反復するなど、前後関係、主役脇役の関係性が変化していくのが面白い。ヴォーカルはフェードアウトしてはリスタートを繰り返す。Baもテンション上がって前に出てくる。セッション的な演奏が続くかと思いきや、突如テープが終わったかのような呆気ないエンド。即興演奏だと思いますが、最も緊張感溢れる一曲。

7.Little Star of Bethlehem

 ミドルテンポの演奏にMalcomのポエトリーリーディング的なヴォーカルが乗る。ギターも変化を加えながらコンスタントに進行する。Velvet Underground好きな人が気に入りそうな曲。距離感のあるサウンドエフェクトが、見たこともないBethlehemの幻像を虚空に映し出していく。ドラムスが盛り上がってきたところでフェードアウトしてしまう。うおーもうちょっと聴きたい!となるくらいが良いのかも…。